Hamatorium Cafe通信

【定時制高校の現場から】

戸塚高校定時制(4)〜生徒たちの4年間の努力を将来につなげるために〜

生徒たちの思いを届け、本当に大切な支援を見つけていく

インターンシップでの職場体験の取り組みはどのくらい実施しているんですか?

椛澤先生
まだなかなか企業とのインターンシップのパイプがつくれていないのが現状です。インターンシップから始めて、その後アルバイトで長期間働いて適性を見てもらい、それが就労へとつながる流れができればいいのですが。

五十嵐先生
工業科や商業科の定時制であれば早めに企業とのやりとりがあるようですが、うちは普通科なので何ができるかということをアピールするのが難しくなります。それに昼間は働いている生徒も多いので、2〜3週間のインターンをする時に休みを取れるかどうかも難しい。

椛澤先生
働く場でかわいがられる子もいっぱいいるので、インターンで人柄やがんばりを認められて就労につながるという可能性もあると思います。それがたとえ就労につながらなくても、社会に出る上で生徒たちのプラスになる場が地域連携の中で増えればと。でも、アルバイトで家計を支えている生徒も多いので、インターンで無給で仕事をするのは実際厳しい。2年後の就労のためだからと言っても、「今現在の家計を支えるために2、3週間仕事を休むことはやはりできない」ということになってしまいます。

夜間にインターンシップを受け入れてくれる企業ができたり、またそこに対する行政のサポートも必要になってきそうです。

椛澤先生
現在は、放送大学の宮本みち子先生を中心とした研究チームが、定期的に学校見学や教員のインタビューをして下さっています。今後は生徒へのインタビューなども予定していて、生徒たちの持つ就職へのイメージや現場で起こっていることがもっと明らかになることで、学校全体、社会全体の取り組みに広がっていくことを願っています。

現場で本当に必要なことを、行政的な施策でサポートできるようになればいいですね。

椛澤先生
これまでは、現場で声をあげてもどこにも届かない、何もできないという状態だったので、それがインタビューなどの調査によって、生徒たちの不安や不満を吸い上げていただいて、その声が行政に届けばと。生徒たちの思いを届けてもらって、本来こういう支援があるべきというところにつながればありがたいと思います。

4年間通い続ける生徒たちの心のがんばりはものすごく大きい

これまでお話を聞いた中で、定時制高校は社会の厳しさの影響がまず落ちてくるところになっているように感じました。すぐ社会に出て働かなければいけないが就職難でそれが厳しい、かといって生活のためにアルバイトに時間を取られて進学も難しいという。

椛澤先生
教員としても在学中は必死に抱え込んで面倒を見ますが、出口の進路保証という点ではまだまだ模索中です。卒業生が学校に顔を出しに来ることもよくありますが、話を聞いてあげることはできても、ほかに何もしてあげられない。新規高卒者の求人しかないので仕事を紹介することもできないし、昔はそれこそ卒業生がやってきて、うちの会社に来なよとか、あそこの会社に人が足りてないみたいだよというようなつながりがあったのですが、今は生徒も増えているので、学校でのつながりが弱くなってきています。そこで、高校を卒業した後にどこにつなげればいいかと考えて見つけたのが、「(株)K2インターナショナル」さんや「NPO法人ユースポート横濱」さんだったんです。

五十嵐先生
毎週金曜日にはK2インターナショナルの方がお二人来て、キャリアカウンセラーとして生徒の面談をして相談にのって下さっています。それはまだ学校内のみなので、そこから実際に就労支援機関に通うというと難しい部分もあると思いますが、そういう支援機関があるということを知ってもらうだけでも大きいし、卒業後もつながれる場があって、学校でできなかった経験もそこで学んでもらってつなげられるような流れができればと思います。

全日制高校の生徒や専門学校生・大学生に比べて、定時制高校の生徒たちは、いち早く社会に出て生活していかなければならない。いろいろな問題を乗り越えながら4年間を過ごすことで、定時制高校の生徒たちの成長ぶりはとても大きいと思います。

椛澤先生
夜これから家族団らんがはじまる時間に、学校にがんばって4年間通うというその生徒たちの心のがんばりはものすごく大きいと思います。生徒たちはその中で本当にやさしい人間になっていきますし、そういう厳しい環境の中で4年間やっていくなかで、友だちと励ましあって、これまでは関わらない生徒とも声を掛け合いながら「がんばってやっていこうぜ」という雰囲気が卒業するまでにできていく。そういうところが卒業する時にはすごい成長したなって思える本当に尊敬できる素晴らしい部分だと思うんです。

五十嵐先生
朝早く起きて、アルバイトをして、夕方から学校にきて、もっとすごい子であれば部活もやって、家に帰ったら夜11時12時。それでまた次の日は6時7時に起きて働きに行っている。そういうがんばっている生徒たちがいっぱいいるということは、本当にすごいことだと思います。その子たちが4年間歩んでいくなかで人間性が大きく成長する。定時制に来て学べば、がんばれば進学もできるし、就職もできる、アルバイトもしながら、全員が自分の可能性を見つけられるようになるのが一番の理想。そのためには学校全体、社会全体で取り組まなければならないし、周りから力を借りなきゃいけないこともたくさんあると思います。

椛澤先生
定時制はセーフティネットだと言われることもあるんですが、現場ではどこもそんなにうまく機能しているという気はしてないと思います。そこをわかってくれる人がいて、本当の意味でのセーフティネットをつくってもらえれば。少しずつサポートしてくれる方が周りで動いて下さっているので、教育の現場でそれをもっと変えていければと。4年間でこんなに変わって成長するという子がたくさんいるのに、仕事につけなかったりする現実がある。4年間必死にがんばったのに行き場のない子どもたちがいるということを、声をあげて伝えて、この状況を変えていかないと。

【後記】
 取材当日は試験期間ということでしたが、試験終了後も遅くまで学校に残って履歴書を書いている生徒たちがいました。その生徒たちの話を聞いていると、「仕事」ということに対してイメージをふくらませて、自分に何ができるか、どんなことをしたいのかを一生懸命見つけ出そうとしていることが伝わってきます。定時制高校の4年間の中で、何度も何度も自分と向き合いながら社会との接点を作り出そうとするその姿勢は、本当に力強く素晴らしいものだと思います。彼らの努力がしっかりと実を結び、卒業後も夢を持って生活していけるように、いま本当に必要な支援はどのようなことなのかを社会全体で考え取り組んでいかなければいけないと感じます。

取材・文/古屋涼


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(2009.12.11)
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