前回、戸塚高校定時制の先生方と行った座談会で見えてきたことは、まず定時制高校の役割は昔とは大きく変わってきているということ。そして、全日制よりも1年多い4年間学校に通うことで、卒業する生徒たちは社会経験を多く積み、学校生活を通じて大きく成長するということでした。
今回、就職活動が例年に増してきびしい状況にあり、たくさんの経験を積んできた4年生の生徒たちが苦境に立たされていると聞いて、再び戸塚高校定時制を訪れました。進路指導を行っている「ガイダンス部」の椛澤一彦先生、五十嵐陽子先生に伺った現場のお話から、多様な問題を抱えている定時制高校の今をレポートします。
—前回の座談会で、定時制に通っている生徒たちは昔のように入学当初から正社員で働いているというケースは稀で、ほとんどが現役で全日制高校に入れなかった子たちが来ているというお話でした。では、その中で何人が卒業と同時に就職できているんでしょうか?
椛澤先生
昨年と今年だと状況が全く違ってきています。4年生が80人いる中で、進学・就職が確実に決まっているのは現在20数人。昨年は、10月くらいまでには就職希望の生徒はある程度決まっていたんですが、今年は、夏休みからがんばって活動をつづけてきた生徒の半分が、今ようやく決まっているような状態です。(11月取材時の状況)
ーとても厳しい状況ですね。
椛澤先生
今までは毎年採用されていたような企業でも、今年はこの不況なので、今までうちの生徒が受けていたところに、全日制の生徒もたくさん受けに行っています。そうしたことで、これまでは採用されていたところに入れなくなり、うちの生徒はあぶれてしまっているんです。
五十嵐先生
採用する側からしても、全日制と定時制の生徒が並ぶと、全日制の方がいいんじゃないかという既成概念がぬぐえないんだと思います。定時制の生徒たちの良さである4年間のがんばりや、継続、努力を重視してもらいたいのですが、ペーパー試験重視になっているので、なかなかそこを評価してもらいにくくなっています。
—定時制の就職活動はいつ頃から始まるんですか?
椛澤先生
7月1日から高卒用求人票が解禁されて見られるようになるので、そこから準備をしていきます。夏休みの間は会社見学で何社かまわって選んで、その後は9月に申し込みをして試験、という流れです。
—昼間に働いていたアルバイト先で就職するケースもあるんでしょうか?
椛澤先生
稀ですね。アルバイト先はコンビニやスーパーが中心なので、生徒たちもなかなかそこには就職したがりません。4年間ずっと継続してアルバイトを勤めあげてそこに就職していく子もいますが、そういうケースは少ないです。本人たちも卒業して仕事となると、アルバイト先とは違うところがいいかなと思うようなので、こちらもアルバイトにつく段階で、就職につながるような適性を見てあげたりしなければいけないのかなとも思います。
—卒業後に専門学校などに進学する生徒はどれくらいいるんでしょうか?
五十嵐先生
金銭的な部分がネックにもなるので、1〜2割ですね。試験に合格しても、家庭の経済状況で入学をあきらめて働かざるをえないということもあります。
—いざ4年生になって就職活動をするとなると、10代のうちから仕事に対するイメージをもつのはなかなか難しいことと思います。
椛澤先生
4年生の4〜6月は卒業に向けての就職ガイダンスを続けて行うので、卒業したらもう仕事に就くんだとその時に踏ん切りがついて行動に移せる生徒は、比較的うまく進んでいきます。でも、全日制が不合格で定時制に入学してきて、そこで何となく通っているうちに自分の分析ができずに、就職もできない専門学校にもいけないというようになってしまう場合もあります。
—定時制の本来の特徴である就労への道が厳しくなっている中で、大学や専門学校に進学できるケースも少ない。生徒たちの卒業後の行き場がなくなってきているんですね。
五十嵐先生
入学時にできなかった部分を4年間で少しずつできるようにしていった先で、じゃあ専門学校や大学に行きたいと望んでも、求められる学力に追いつかず、そこでの能力のギャップが埋まりません。経済的にきびしい家庭状況の場合は、進学するために昼間は一生懸命アルバイトをして金銭的な面をクリアーして、その上で能力や学力面も必要になります。就職をできるようにする取り組みと、専門学校や大学にいけるように学力を上げる取り組み、学校に来れなかった子が学校に来れるようにする取り組み、どうやってそれぞれに合ったサポートをするかが重要だと思います。
—入学する生徒たちの背景も多様になってきていることで、必要な取り組みも複雑になってきているわけですか。
五十嵐先生
卒業後の就職・進学といった結果が求められているというところで、この厳しい就職状況だとその結果を出すのが難しい。卒業して社会に出たいという子に対して、就職するための壁をクリアーしてやっていけるようなことが、今の4年間では与えられていないんじゃないかという問題があって、そこの取り組みをどう学校が変えていくかということが議論になっています。
—横浜マイスターのような、授業で早くから仕事に対するイメージをもってもらう取り組みとともに、まだまだ新しい取り組みが必要に感じます。
椛澤先生
今はどこの定時制でも、学校としての方向性をどうしようか迷っています。工業とか商業であれば狙いははっきりしていますが、横浜市では工業・商業の定時制が減ってきて、普通科のうちが残りました。普通科では生徒たちのどこに焦点を当てていけばいいかということがすごく難しい。たとえば、すごく勉強ができて進学を希望している生徒がいる、また逆に自分の名前を書くのがギリギリな生徒がいる、そういう中でどこを重点的にしていけばいいか、ひとりひとりに合ったサポートをどうやっていくのか。一部分を手厚くしても、別の面でのサポートが行き届かなくなってしまうという問題があります。
五十嵐先生
定時制の生徒は、全日制の生徒よりも早く就職に対する意識、社会に出ることを考えているので、そういう中で評価される部分があると思うんです。社会性が身に付いてきちんとした言動、行動がとれる。でも試験だと試験の中身が重視されて人間性を見るのはあとになってしまうので、試験の結果でとってもらえなくなってしまう。でもコツコツやっていく力はあるので、そこを評価してもらえるようになればと思います。