――最近の生徒と、昔の生徒が違う、というのはあるんですか?
椛澤先生
違いはほとんどないと思いますよ。でも、昔の生徒はそんなに考えないでいてもなんとか仕事があったんですよ。でも今の生徒は1年頃から将来のこと、仕事のことをしっかり考えていないと、どうにもならなくなってる。
――それは経済状況の変化であって、生徒のポテンシャルの変化ではないということですよね。
椛澤先生
そうですね。後は情報量が圧倒的に違います。これだけ情報が氾濫している中で、「さあここからひとつ自分に向いている仕事を選べ!」って言われても、少ない経験の中で選ぶのはちょっと厳しいですよ。
――情報量と経験値のアンバランスが混乱を生んでいるんですね。
椛澤先生
1、2、3年生で、あまりキャリア教育的な取り組みをしていないで、4年になったんだから、就職だから、働きなさいじゃ、今の時代ではなかなか厳しいですよね。だから、いかに自己理解や、職業理解を経験として積んでいけるかが大事だと思い、いろいろと試行錯誤したわけです。
篠原先生
いま思ったんですが、4年あるっていうことは定時制の良いところかもしれませんね(笑)。そういえばそんな事を他の先生もおっしゃってましたよ。4年生で一気に雰囲気が変わるんです。この1年でどうにかしなきゃって。もし3年制だったらこの成長がないまま終わっていたかもしれません。
五十嵐先生
やんちゃな子もいるんですが、仕事して学校いって部活もして、4年間通っている事がすごいって思うんです。定時制の生徒は18、19歳にしては素直ですよ。
五十嵐陽子先生――昨年度までは新潟の全日制の高校に勤務。今年度から戸塚高校定時制に。現在は、椛澤先生の元で進路指導を担当。座談会は後半から参加している。
椛澤先生
それは、多分、中学で同学年の友達の多くが1年前に高校を卒業して、次に進んでいるということも影響しているんじゃないかと思います。確かに、この1年で大人になるんです。だから企業のみなさんお買い得ですよって(笑)、私は宣伝して回っているんです。
――先生が会社回りをする際に持っていかれる資料(写真参照)にも「一般の高校の卒業生とはひと味違います」と書いてありますね(笑)。
椛澤先生
普通高校より1年多く時間をかけて、生徒を育てることができる。この定時制のメリットを、教員がどのように活かし、生徒を支えていったらいいんだろうっていう議論が、各学校それぞれであると思うんです。いろんな定時制高校がやっている良いものを取り入れ、或いはそれがきちんと機能しているのかって。ようやく最近そういう学校同士のつながりが出てきたんです。…それでもまだ難しい部分はありますけどね。
――卒業後のフォローに関してはどうですか?
椛澤先生
全員が4年で一応、卒業するんですけど、全員が自分たちの行きたい会社に行けるわけでもなく、進路未決定でそのまま行き場を失う生徒もいるのが事実だと思うんです。そこで2、3年前から、「K2インターナショナル」であったり「よこはま若者サポートステーション」であったり、地域で若者の就労支援をしてくれる機関といろいろと接点を持ち、学校と就労の間に溝を作らないという取り組みをしてきました。
――それはつまり、ニートにさせないということですよね。
椛澤先生
不登校でうちの高校に入って、「4年間楽しかったです。ありがとうございました」っていって、またひきこもりに戻っちゃう。その悪循環だけはなんとか絶ちたいなって。
篠原先生
「学校が終わったら全部終わりじゃないよ」と。
椛澤先生
学校から社会に出る部分のつながりを作ってあげられなかったっていう部分での自分の中での教師としての挫折感ではないけど…、失敗かな。自分が、もっとやってあげれたことがあったのに、してあげられなかったっていう部分で、じゃあどうしたらいいんだろうっていうところから、いろいろやってきたんです。
――その学校と社会の間の支援機関とは、しっかりと連携が取れているんですか?
椛澤先生
今はまだ、後よろしくって、無責任に投げている段階ではあると思うんですけど、それでも居場所だけは何とか作ってあげたいですね。決して全員が4年間で花開かなくてもいいんだよっていうところを教員も本人も保護者も含めて理解してもらえれば、この学校の使い方・使われ方っていうのも変わってくるのかなというところがあります。
――改めて、定時制というのは、生徒をどこまで育てることを役割としているところなんでしょうかね?
篠原先生
それは学校だけで完結することではなくて、企業も含めた地域の中で、卒業後どうやって生徒をケアし、自立させていくのかっていうことが大きなテーマなんだと思っています。
【後記】
各校で知恵を出し合うことで、定時制のイメージアップの方法や、より有効な進路指導の在り方が見えてくるかもしれません。様々な取り組みで高校生たちの職業意識をしっかり底上げして、地域で自立までをどう育てていくのか。それを模索する中にこそ、新しい定時制の役割も見えてくるのかもしれないと思います。