定時制高校というと皆さんはどんなイメージを持つでしょうか? 日中、汗水流して仕事をしている若い人が夕方過ぎから勉強をしに行くところ…。ひょっとしてそんなイメージを多くの方が抱くかもしれません。ところが「不登校」や「ひきこもり」など、自立の仕方が揺らいでいる昨今、定時制高校事情はちょっと違ってきているようです。
今回はそんな定時制高校の現状を、キャリア教育に熱心に取り組んでいる横浜市内の定時制高校、戸塚高校定時制の先生方にお話を伺って来ました。
学校に伺ったこの日、9月に行われる就職試験準備のため、夏休みだというのに進路室では3人の4年生が就職活動をしていました。
「みんな試験勉強をやってるの?」と聞くと、「どーなんですかねぇ?!」と、ちょっと照れながら弾んだ声が返ってきます。とても素直な印象で、真剣に勉強している様子が伺えます。
「彼らの学年は、すごく評判の悪い学年だったんです。入ってきた時は相当ガチャガチャしてましたし。それが4年間でああいう柔らかい態度に自然となっているんです。」と椛澤(かばさわ)先生は語ります。
椛澤一彦先生…6年間、戸塚高校の定時制で教鞭をふるい、4年生の進路指導を担当。進路指導の在り方に疑問を抱きながら、さまざまな取り組みを提案・実施してきた。
――定時制にはどんな生徒たちが通ってきていますか?
椛澤先生
定時制に来る生徒っていうのは、普通の教室の中からはみ出ちゃった子たちです。それが一気に横浜じゅうから集まってきているんです。今は昔のように、入学当初から正社員という形で入ってくる生徒はほぼいません。過去4年間で一人だけ。8~9割は現役で全日制高校に入れなかった子たちが来ています。やり直しどころじゃなく、敗北を背負って入ってきている。生徒も相当の決意できています。
――なるほど。だからかもしれませんが、定時制って中退者が多いと聞くんですが…。
篠原先生
卒業時の生徒数は入学当時のだいたい半分になりますので、全日制に比べてやはり多いと思います。
篠原圭三先生…臨任から数えて4年目。昨年度、4年生を担当し、今年度は1年生の進路指導を担当中。様々な生徒の進路を見てきた経験を踏まえて、1年生に対して熱心に取り組んでいる。
――どのようにすれば中退者が減るとお考えですか?
篠原先生
1年のうちはとにかく学校にさえ来ればいいと僕は思っています。学校に来なければ教師は何にもできないですからね。4年の就職の時に1年の時の欠席数が最終的には響いてきます。残念なことに、それを彼らが理解するのは、就職する4年生になって調査書をもらったときなんです。1年の時になんてことやっちゃったんだって。でもその時に後悔しても、もう遅いじゃないですか。僕自身、それが4年を担当した時の反省点なので、だから今のうちから口酸っぱく、嫌われてもいいから、僕は1年には言うんですよ(苦笑)
――じゃあ反対に卒業していった生徒のその後どうなっているんですか?
篠原先生
先日、就職した卒業生と食事をした時に、彼は「想像してたやりたい仕事と違う」と言っていました。こういう感想を言うことが一番多いんです。それに対しての答えとして一般的に、「3年は我慢しろよ」という先生もいますが、僕は「本当に辞めたくて眠れなくなるくらいまで悩むんだったら辞めてしまいな」と言います。その卒業生にもそう言いました。
――それはどうしてですか?
篠原先生
昨年の卒業生で、誰よりもいい会社に入社したのに、誰よりも早い5月で辞めたやつがいました。その時に、いい会社に入社する事がすべてじゃないんだな、その人に合った会社に入らなければ意味がないんだと思いました。
――卒業しても、就職先でのミスマッチの問題がまだあるんですね。
戸塚高校では、このミスマッチを解消させる取り組みとして積極的にキャリア教育に取り組んでいる。
2年生には、横浜市経済観光局が認定しているものづくり専門家「横浜マイスター」を講師として学校に呼んでいる。美容師の指導のもとマネキンの髪をカットしたり、調理師には実際に料理を教えてもらったりと、様々な職種を体験から知ること授業となっている。
また3年生には、生徒と近い年齢の社会人を呼んで、仕事に関する座談会「仕事人と話そう」を実施している。仕事の内容からやりがいまで、じっくりと話を聞いて、卒業後の具体的なイメージをもってもらおうという取り組みになっている。
こういった体験・交流型のキャリア教育を早い段階から取り入れて、生徒が少しでも多くの職業に触れる機会を作っている。
―― 一方で生徒たちの就職に対する意識はどうなんでしょうか?
篠原先生
一概には言えないですけど、仕事を選ぶ基準とかは多分持ってないんじゃないんですかね。コンビニとか、建設現場とか、日常的に目に入る仕事だけで、彼らの職業観が出来上がっているように感じますね。
椛澤先生
その他の仕事は、ほとんどがテレビで観ている仕事なんです。テレビで観て、何の仕事かよくわからないけど、なんかネクタイ締めて、カッコいいと。イメージから入るけど探しようもないし、高校の求人票には全然ない。求人票を見て「なんだよ、うちの学校しけてんな」っていう風に、嫌な言い方をする生徒もいます。
――とても多様な問題を定時制高校は抱え込んでいるんですね。